先日「君の名は。」を見て衝撃を受けたので、今更ですが深海監督の「秒速5センチメートル」を鑑賞しました。
賛否両論ある作品みたいですが、私はとても心抉られました。
人の恋情のリアルな変化を突きつけられ、何ともやるせない気持ちが残ります。
ネタバレを含むのでご注意ください。
第一話「桜花抄」
栃木に引越してしまった明里に東野くんが会いに行くお話。
雪の為途中電車が止まり約束の時間に間に合わないというハプニングもありましたが、無事二人は再会。
お互い特別な感情を持ってはいたものの、それが恋だったことがあのキスシーンではっきりわかりましたね。
言葉にはしないものの、お互い惹かれ合っていることが綺麗に描写されています。
しかしこのシーン、幼い二人にはどうしようもできない未来を思わせ、何とも切ない気持ちにもなります。
ジーンとはきたものの、まだここまではまあありきたりな話で少し退屈だったというのが正直な感想です。
しかしやはりあの鮮明で綺麗な景色は逸脱です。
10年近くも前の映画とは思えません。
桜や雪の降り方、建物や電車のリアルさ、日常の描写が本当に美しいです。
第二話「コスモナウト」
鹿児島に引越してきた東野君に恋する澄田さんのお話。
結局澄田さんは東野君に想いを告げられないまま卒業します。
東野君の中にある絶対的な何かを察していたのかなと。
明里を想っていたとかそういう確信ではなく、自分には超えられない強い思いが東野君の中に存在していたことがわかったんじゃないでしょうか。
ロケットが打ちあがり画面の中央を分裂しているシーンは、様々な登場人物の人生が枝分かれしていくようで何とも切ない幻想的なシーンでした。
第三話「秒速5センチメートル」
社会人になった東野君は三年付き合っていた彼女に「1000回メールしても、心は1センチくらいしか近づけなかった」とメールで言われ振られます。
この言葉すごく響きました。
結局、物理的な距離がいくら近づいても、心の距離が近づくわけじゃないんですね。
ずっと離れている明里に心は全部持っていかれているんだな~と。
これをセンチメートルっていう単位で表しているのが、この作品のタイトルともリンクしていてとてもいいですよね。
そして東野くんが明里を想い続けている一方、離れて暮らしていた明里は別の人と結婚し二人は結ばれないという結末です。
ラスト電車の踏切で大人になった二人が偶然にもすれ違いますが、東野くんは声をかけないまま踏切を渡り終え、長い電車が通りすぎた頃には明里の姿は消えていました。
きっとこういう偶然を奇跡にできることの方が少ないんだなと、容赦ない現実を突きつけられた気分です。
楽曲の良さ
このお話のメインは何と言っても、山崎まさよしさんの「One more time,One more chance」の曲をバックに今までの二人の回想が流れ出すシーンでしょう。
これはもうずるいです。感動するしかないです。
歌詞とこの映画の世界観がマッチしすぎていて切ない。
主に東野君側に感情移入してしまいました。
このシーンを見るための一話二話だったのかと!
ここまで観た甲斐がありました。
報われない初恋の切なさ
子供の頃から大人になっても、明里を忘れることのできなかった東野くん。
一方、離れている間に前に進んでしまった明里。
明里の中で東野くんは大切な思い出になってしまいました。
結局幼い頃の初恋が実ることはなかったというあまりにも救われない結末でした。
でもこれはもうどっちが悪いとかはないんですよね。
ただ二人の人生が交わらなかったそれだけのことです。
これは個人的に思うことですが、離れて過ごしていればお互い「知らない人」になっていきます。
東野くんが思い続けている明里も幼い頃の明里なんですよねきっと。
そこに留まり続けた結果だと思います。
それが必ずしも相手が同じ気持ちでいるとは限らない。
あああ~本当に残酷で切ないです。
あまりまとまりのない感想になってしまいましたが、初恋・距離・人生・人の想いなど、いろいろ考えさせられました。
深海監督の世界観が最高に詰め込まれた作品の一つだと感じました。
※後日小説版を読んでこの作品の感じ方が大幅に変化したので、また書き記したいと思います。
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